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仙台高等裁判所 平成元年(ラ)99号 決定

抗告人 商工組合中央金庫

代表者理事長 宮本四郎

代理人弁護士 藤井富弘

同 山本卓也

同 金井亨

福島地方裁判所いわき支部平成元年(ケ)第一一七号不動産競売事件について、同裁判所が平成元年一〇月五日にした不動産競売申立の一部却下決定に対し、抗告人から執行抗告があった。よって、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

一、原決定主文第二項を取り消す。

二、原決定別紙担保権・被担保債権・請求債権目録2の二記載の債権のうち三九、〇〇〇、〇〇〇円までの弁済に充てるため、同目録1の(1)記載の根抵当権に基づき、原決定別紙物件目録記載の不動産について、担保権の実行としての競売手続を開始し、抗告人(債権者)のためにこれを差し押える。

理由

一、本件抗告の趣旨及び理由は、別紙執行抗告状、執行抗告補正書の各写し記載のとおりである。

二、 1. 本件記録によれば次の事実が認められる。

(一)  抗告人(債権者)と債務者兼所有者大友建設株式会社(以下「大友建設」という)とは昭和五七年四月二七日本件根抵当権設定契約を結び、「根抵当権設定者は、別に差し入れた約定書の各条項のほか、下記条項を承認のうえ、〈省略〉根抵当権を設定しました。」として、被担保債権の範囲を「①銀行取引によるいっさいの債権。②貴金庫が第三者から取得する手形上、小切手上の債権。」と約定した。

上記の別に差し入れた約定書は、上記当事者間において昭和五二年九月三〇日作成されたものであって、その第一条(適用範囲)の①において、「手形貸付、手形割引、証書貸付、当座貸越、支払承諾、外国為替、その他いっさいの取引に関して生じた債務の履行については、この約定に従います。」と約定されていた。

(二)  本件根抵当権設定登記には、債権の範囲として、「銀行取引、手形債権、小切手債権」と表示されている。

そして、大友建設は、昭和五九年三月一九日抗告人との間に、申請外有限会社和花が抗告人から借受ける一二〇、〇〇〇、〇〇〇円の借受金債務につき連帯保証契約をした(原決定の別紙担保権・被担保債権・請求債権目録2の二の債権の発生原因となった契約)。

2. 上記の事実によれば、上記保証契約による債権は、上記根抵当権設定登記の被担保債権として表示されている銀行取引による債権に含まれると解するのが相当である。

けだし、上記の保証契約も、抗告人と大友建設との間の銀行取引が継続する過程において、両者の間で直接締結されたものであり、この取引は、直接的には主債務者である有限会社和花に対する与信行為ではあるが、同時に大友建設に対する与信に準ずる行為とみることができるので、この保証契約は、銀行取引の類型に含まれると解することが可能だからである。

三、そうすると、原決定別紙担保権・被担保債権・請求債権目録2の二の連帯保証債権も本件被担保債権に含まれるとする抗告人の本件執行抗告は理由があるから、これを却下した原決定を取り消し、右却下した部分の債権について競売手続を開始することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 糟谷忠男 裁判官 渡邊公雄 後藤一男)

〈以下省略〉

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